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しかし、
「うるさいっ!」
少年がそう言うと同時、再び風は生まれ出ずる。先よりは弱いそれは、それでいてなお容易く肉を断ち切る威力を持つ。しかしそれでも、女神には届かない。彼女の鼻先で微風に変わり、髪を靡かせるに留まる。
その時、気を失っていた大地が目を覚ました。
少し時間を要し現状を把握すると、空に優しく微笑んだ。
「ありがとうございます。また、助けられちゃいましたね。」
対する空も安堵しながら言葉を放つ。
「い、いえ、ぜ、全然大丈夫ですっ!」
「本当迷惑かけました、アイツも・・・」
アイツ・・・そうか。
先まで感じていた気味の悪い何かの正体は、大地さんの・・・
「後で・・・全部詳しく話しますね。」
俯きがちに言葉を放つ大地。珍しく語尾にいくにつれ言葉が弱々しくなっていく。
「そうですね、今はとりあえず・・・」
空は目を細めて言葉を放つ。
「あなたのお顔を見せて。」
目の前のフードの少年に向けて厳かなる風が放たれる。厳かであり、慈しみのある穏やかな風。
「やめろ!」
言うが遅く、彼の顔を覆っていた深いフードがふわりと持ち上がる。少年が我武者羅に風を放つも、その悉くが相殺されていく。
そして、
「えっ・・・!」
空と大地は露わになった彼の顔を見て同時に驚愕の声を上げた。
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