クリスマスと悲劇

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「やべっ、そろそろ帰んなきゃか。」 大地が少し焦ったような声を上げる。時刻は夜の八時であった。思っていたより時間が経っていた事に、ウィンクルを思い浮かべた大地は苦笑した。千尋の家は門限に厳しく、九時までに家に帰らなければ説教を食らうらしいのだ。 「本当だ…いつもごめんね。」 千尋がそう言いながら申し訳なさそうに俯いた。大地は苦笑しながら、千尋の頭に手を置き、大丈夫、と声をかけ歩き始めた。 (やっぱ九時ってさすがに早いよな……小学生かっつーの。) 千尋はそのあとをちょこちょことついていき大地の手を取った。 口にこそ出さないが、大地はその門限のことに関しては多少不満を抱いている。前に夏の時期に二人で三時間かけて海へ行った時も、門限を守る為に、夕食は一緒に食べられなかったこともある。 彼らは二人とも大学生だ。社会人ほどではないが、平日などはほぼ時間がなく一時間も一緒にいられることもなく帰宅させなければならない日もある。 (まぁでも心配なんだろうな、わからんでもない。) しかし大地にも心配している親の気持ちは伝わるので、この思いは一生口に出されることはないだろう。 帰り道。駅までの道を手をつなぎながらとぼとぼと歩く。ふと千尋が大地に声をかける。千尋は大地が振り向くのを確認してから、声を発した。 「大地…」 大地は、どうした、というような仕草で首を傾げている。
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