episode,1

9/34
前へ
/49ページ
次へ
  警備兵の視線に内心では溜め息だが、ユーリは苦笑するに留めた。 (……有名になりたくないから、ウィスさんにお願いしたはずなのに、どうしてバレてるかなぁ……。 またお酒の席で言っちゃったのかなぁ) そんなことを考えていたら、ユーリに見惚れていた彼が、慌てて羊皮紙をユーリに返す。 「し、失礼致しました! 学園長からは来客があると伺っておりましたので、どうぞ、お通りください!」 視線から解放され、ユーリは安堵しつつ、 「ありがとうございます。 エウル、行こうか」 「うんっ」 エウルの手を引いて学園に入っていった。 彼女達が行ったあとを目で追い、 「まさか、白銀の月姫が、 あんな可憐な方だったなんて…」 と警備兵が独り言を漏らした。 ♪ 外観もそうだったが、学園の建物内部もまた、荘厳だった。 造りこそシンプルなものの、だからこその様式美がある。 清掃も隅々まで行き届いるようで、汚れらしい汚れも無く、何百年も続く学園のはずなのに、すべてが真新しく映る。  
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加