episode,1

2/34

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
  「エウル、エウロディア! 朝だよ、起きて!」 街が騒がしくなってきたものの、まだ人影も少ない商店街の一角。 [白猫亭]にユーリの声が響く。 いつもなら時間通りに起きてくるはずの娘が珍しく寝坊していた。 彼女は昨夜、かなりハシャいでいたから無理もないのだけれど。 「もう、今日から学校に行けるって、昨日はあんなに騒いでたのに……」 ここ三年で独り言が増えたのを自覚して、しかしユーリはひとりごちた。 朝食の準備も終わり、窓から外を見ると、空は眩しいほどに快晴で、レンガ造りの街並みに鮮やかに色を与えていた。 開店の準備をしようとして、今日は臨時休業にすることを思い出し れというのは凄いとユーリは思った。 三年前にここに来た時には、右も左もわからずにとても苦労した記憶も、今は笑い話に変わっている。 いろんな人に支えられてきたんだなぁ、とユーリは朝日の照らす街に感謝を捧げた。  
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加