第七章 井戸にて

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イズミが山道を歩いていくと、あの丸太橋のそばで近所の住民らしきおばさんたちが数人、ライの家の方を見ながらヒソヒソと立ち話をしていた。 いやな予感がしたイズミは訊いた。 「すみません。何かあったんですか?」 おばさんたちは一斉にイズミへ話し出した。 「3日前から長岡さんのお嬢さんが行方不明なの。皆で探したけれど見つからないのよ」 「ニュースにもなったのよ」 「でもあの年頃は家出することもあるしねって、皆で話していたの」 「3日前から行方不明?!」 3日間寝ていたイズミはニュースなど観ていないから、何が起きたか知らなかった。 行方不明のニュースから、学校でライは死んだという話になったのかとイズミは納得した。 「最近このあたりで若い女性が次々と行方不明になっているのよ。それにライちゃんも巻き込まれたんじゃないかって心配していたの」 「若い女性が次々と?」 イズミはとっさにあの写真と井戸を思い浮かべた。 『あそこしかない』
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