5人が本棚に入れています
本棚に追加
おおかみ(M)
「こんなことになるなんてことは、ずっと分かっていたことだった。だけど、ずっと目を逸らして、きっといつかは、僕らにとってやさしい世界に変わるって信じてた。その時を待っていた。けれど、現実はこんなにも残酷で、こんなにも…」
ーあるお家ー
おかあさん
「じゃあ、気を付けていってくるのよ」
赤ずきん
「はーい!いってきまーす」
赤ずきん(M)
「わたしは赤ずきん。今日はお天気もいいし、久しぶりにおばあちゃんのお家に木苺を届けにいくの。おばあちゃんは体を悪くしてて、大好きなジャムを作れないの。だからわたしが変わりに作ってあげるんだ。おばあちゃん、喜んでくれるかなぁ」
赤ずきん
「ランラランララーン♪」
【道を歩いていくよー】
おおかみ
「スースー」
《寝息》
赤ずきん
「ラーラララーフンフンフーン♪」
おおかみ
「……っ…ん……んん…」
《目を覚ます》
【木の裏から顔を出す】
赤ずきん
「フンフーンラーラララーふふふっ♪」
おおかみ
「……!」
おおかみ(M)
「一目彼女を見て、その瞬間僕は恋に落ちてしまった」
おおかみ(M)
「なんてかわいい子なんだろう…!」
赤ずきん
「風が気持ちいい…。あ、こんにちわ小鳥さん」
小鳥さん
「こんにちわ、赤ずきんちゃん」
おおかみ(M)
「赤……ずきん…?っていうんだ。どこへ行くんだろう」
小鳥さん
「今日はどこへ行くんだい?」
赤ずきん
「あのね、おばあちゃんのお家に行くの。おばあちゃん、体が悪くって…。おばあちゃんのためにジャムを作ってあげるんだぁ」
小鳥さん
「そうかそうか。そりゃあいい」
おおかみ(M)
「体が悪いおばあさんのために…。優しい子なんだ」
赤ずきん
「じゃあね、小鳥さん」
小鳥さん
「ああ。―――あ、赤ずきんちゃん」
赤ずきん
「なぁに?」
小鳥さん
「この辺りにはオオカミが住んでいるんだ。だから、くれぐれも気を付けるんだよ?もし遭遇したら、大きな声を出すんだ。そしたらきっと、猟師が助けに来てくれるからね」
赤ずきん
「………。」
【ちら、とおおかみの方を見る】
おおかみ(M)
「…? 今、僕を見た…?」
赤ずきん
「うん、そうする。ありがとう小鳥さん」
小鳥さん
「いやいや。じゃあ、気を付けてね」
【飛び立つ】
最初のコメントを投稿しよう!