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おおかみ(M)
「! ダメだ!こんな…こんな爪の手で彼女に触れたら、傷をつけてしまう…!こんな腕で彼女を抱き締めてしまったら、彼女を殺してしまう…!ダメだ、ダメだ…ッ!」
赤ずきん
「ふええ…ヒック…ふぇっ…うええん…」
赤ずきん(M)
「つらいよぉ…。どうして…どうして神様はこんないじわるをするの?」
おおかみ(M)
「何度だって願ったさ。僕らが一緒になれる、そんなやさしい世界になりますようにって!けど、神様はなんにもしてはくれなかった。だから僕は…ただ君を見ていることしか…!君の涙を拭いたい。大丈夫だよって言ってあげたい。君を抱き締めたい…!だけどできないんだよ!!」
赤ずきん
「…ふぇ……ッ……おおかみ……さぁんっ…」
おおかみ
「!」
おおかみ(M)
「触れちゃいけない。話しかけてもいけない。なぜなら僕たちは、オオカミと人間だから。だけど…!愛しているよ。愛しているよ!君のことを本当に愛しているんだ。赤ずきん…」
おおかみ
「赤……ずきん…ッ!」
【飛び出そうとした瞬間、赤ずきんの背後からオオカミが飛び出し赤ずきんの首に噛みつき息の根を止め、腹を食い破る】
おおかみ
「!!………あ……ああ…あ……ッ!!」
オオカミ
「………クチャクチャ。…だから言ったろ?ボケーッとしてたら横取りしちまう、ってなぁ?ヒヒヒッ…ハーッハッハッハッハ!!」
おおかみ(M)
「望んでいたことは、こんなことじゃなかった。こんな酷い世界なんかじゃない。けれど、いつかはこうなるって分かっていたんだ。それでもやさしい世界を望んで、ひたすら待って…」
小鳥さん
「かわいそうな赤ずきん…。だから忠告してあげたのに。出会いは、終わりへのシナリオ…。だけど、終わりもまた、出会いへのシナリオ。そうやって、物語は続いていくんだ。おおかみと赤ずきん。君たちは、お互いに気づいた時点で、すでに出会っていたんだよ」
おおかみ(M)
「だから、僕は待っているよ。君の涙が止むまであの木の向こうで。ずっと…」
*End*
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