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……は?
黒木の驚きも無理はない。
佐武の申し出は明らかに薫子狙いだったのだから。
それは、これから佐武が関わる事業の雑貨一切を黒木の所で調達する代わりに薫子を息子に、というものだった。
このあからさまな要求に呆れ果てた黒木はしばらく言葉を発する事が出来なかった。
しかし、答えは決まっている。
否。
会社の利益よりも薫子が大事。
そもそも利益と薫子を天秤にかける方が間違いだ。
「…佐武先生。
せっかくのお申し出ですが、それは聞かなかった事にしたいと思います。
浅海は私の片腕とも言える大事な秘書です。
また浅海の意思を聞く前からお答えする訳には参りませんので。」
「今日は連れて来ているだろう?
ここに呼んで話しをしてみよう。」
仲居に、薫子と息子を呼ぶように伝える。
「黒木さん。
私は息子が可愛い。
妻を早くに亡くしてから再婚もせずに今日まで頑張れたのは息子がいたからだ。
私の今があるのは息子のおかげなんだ。
忙しい私は息子の面倒もろくに見れないまま、家政婦に任せたきりで、気がついたらもう立派な大人になっていた。
散々、寂しい想いをさせた罪滅ぼしに、せめて好きな相手と幸せになって欲しいと願っているんだ。
息子から浅海さんの話しを聞いて是非ともと思ってね。
黒木さん、どうだろう?
黒木さんからも浅海さんにお口添え頂けないだろうか。
この通りだ。」
頭を下げる佐武に怒りが込み上げる。
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