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「さて、どうやら思考できる程度には落ち着いたようだな」
目の前で女の人が話している。
僕はそれを聞き流す。
「おいおい。人の話は真面目に聞けと死んだ親から教わらなかったのか?」
とっさに彼女のことばに両親を思い出してしまった。
渋々。
「あんた何者だ? どうして僕に手を貸すんだ?」
女性は目を細めて鼻を鳴らした。
「自惚れるな。お前は"生き残り"なんだ。《デスサイズ》に対する有効な武器足り得る」
その名に鳥肌が立つ。
《デスサイズ》。死神の鎌を意味する魔獣。
その災害に呑み込まれた村の生き残り。
――それが僕、アルエスト・フランシーズ。
「何処へ行くつもりだったんだ?」
「決まってるだろ? 復讐だ」
家族を、両親と妹を殺されて、黙っていられる奴なんて居ないだろう。
「あいつは魔獣だぞ。お前はその危険性を理解していない。怪物を一匹倒すのが精一杯のお前には到底敵わない相手だ
お前は分かっていない。有名な実験を話してやる。
アレイド帝国の学者が怪物を99匹閉じ込めた檻の中に魔獣を一匹放った。数分後、その檻の中は怪物の血で染まった。魔獣は傷の一つも負っていなかった。
分かるか? 魔獣ってのは怪物99匹束になったって敵わない<天災>なんだ。理解しろ。犬死にするつもりか?」
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