#00 少しだけ前の話

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「さて、どうやら思考できる程度には落ち着いたようだな」 目の前で女の人が話している。 僕はそれを聞き流す。 「おいおい。人の話は真面目に聞けと死んだ親から教わらなかったのか?」 とっさに彼女のことばに両親を思い出してしまった。 渋々。 「あんた何者だ? どうして僕に手を貸すんだ?」 女性は目を細めて鼻を鳴らした。 「自惚れるな。お前は"生き残り"なんだ。《デスサイズ》に対する有効な武器足り得る」 その名に鳥肌が立つ。 《デスサイズ》。死神の鎌を意味する魔獣。 その災害に呑み込まれた村の生き残り。 ――それが僕、アルエスト・フランシーズ。 「何処へ行くつもりだったんだ?」 「決まってるだろ? 復讐だ」 家族を、両親と妹を殺されて、黙っていられる奴なんて居ないだろう。 「あいつは魔獣だぞ。お前はその危険性を理解していない。怪物を一匹倒すのが精一杯のお前には到底敵わない相手だ  お前は分かっていない。有名な実験を話してやる。 アレイド帝国の学者が怪物を99匹閉じ込めた檻の中に魔獣を一匹放った。数分後、その檻の中は怪物の血で染まった。魔獣は傷の一つも負っていなかった。 分かるか? 魔獣ってのは怪物99匹束になったって敵わない<天災>なんだ。理解しろ。犬死にするつもりか?」
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