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「さらにだ、10年に一度魔獣には世代交代がある。お前の両親を殺した個体の《デスサイズ》を殺すためにはあと8年で使い物になるレベルまで育たなければいけない。
お前にそれができるか?」
何も言い返せなかった。
事実だからこそ。間違っていないからこそ。
「私ならお前を5年、いや3年で使い物になるようにしてやれる。どうだ?」
「そりゃ、願ってもないことだけど。何でだよ。人に教えるほどの技量があるなら、あんたが《デスサイズ》と戦えば良いだろ?」
「いいや、私にはできない。私はもう衰えている。満足に《魔術》も使えないんだ」
「あんたは剣士だろ? なんで魔術を?」
「魔術が使えないなら戦闘なんてするな。それはただの自殺だ。特に力の無い女子供はな」
その口調に滲むのは、自嘲だった。
自分を嘲り、貶める言葉だった。
「……分かった。教えてくれよ。あんたの剣を。それから名前も」
「私のことは、敬意と皮肉を込めて"師匠"と呼びな。先ずは魔術を、それからどんな武器でも扱えるように特訓するんだ。
お前の基本装備は防御を捨てた二刀流だからな。守ることの重要性を学べ」
師匠はそういい捨てるとさっさと小屋に戻っていった。
滅ぼされた村、シーベント。
その焼け跡に建つ小屋が、今日からしばらくの僕の寝床になる。
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