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五、捕
狼と兎を追って雑林に入った三匹の犬のうちの一匹、太一は月明かりを直に感じられる草原と違って真っ暗な環境を嫌悪しているようだった。
けれどまさか暗闇が怖くて云々…なんて言えるわけない。
気まぎらわしに太一は、こんなときでもチャラチャラとしているジェンにつっかかっていた。
「…だいたいジェン、なんで兎まで撃ったんですか。それじゃなくても兎は小さいのに…ヘタして死んでたら今度こそクビですよ」
「だって狼の野郎、わざわざ兎を連れて逃げたんだぜ?もしかしたら死んでるかもと思って撃ったんだよ」
「……」
「なんだよ、その疑いの目はぁ!ちゃんと見分けたって。絶対、百パーセント、兎は生きてるさ」
「…その自信はどこからくるんですか…」
暗闇の中で不敵そうに笑ったジェンは、そっと暗闇の先を見つめた。
少しずつ、血の臭いが濃くなってくる。
サムウェイが狼と兎を見つけるまでそう時間はかからないと、ジェンは知っていた。
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