【全ては主人の御心のままに】

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恐怖に呑まれ、狼狽えていては、幾らフレイラといえども造作もないことだ。 所詮は人間、限りなく不老不死に近いといっても、所詮は人間だ。 限度がある、限界がある。首を落とし、四肢を切り落とし、五体を切り刻み、全身隈無く斬り爆ぜれば、死ぬ。 使いたければ使うがいい。回復の呪文を、再生の魔法を、復元の魔術を。回復する度に殺し、再生する度に破壊し、復元する度に痛みと苦しみを与え続けてやろう。 貴様等はよく言っていたな。 我等魔族を「悪」であると、人間こそが「正義」だと。 それは一体誰が決めた、一体何処の誰が定めたものだ。 正義など、この世には無い、そんなものは存在しない。 どちらかが悪で、どちらかが正義、そんなに都合よく世界は二分されてなどいない。 「争う以上、どちらも悪だ」 「殺し合う以上、どちらも悪だ」 「命を奪い、命を喰らい、互いに否定し拒絶し合う………それの何処に正義がある」 皆なりたくないのだろう、悪に。 だから正義を名乗るのだろう。 そんなもの、この世のどこにも在りはしない幻であるのにも関わらず────それでも変わらず正義を語る。 女神が、あのあばずれが、そうあれかしと世界を創造したからだ。
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