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ショッピング行ってすっきりしたはずなのに、また落ち込みそうになる。だが急募と書かれてあるなら、チャンスはある。次の休みに行こう。ハナは最後の1枚の履歴書にペンを走らせた。長い就活にピリオドを打つことを願って。
次の休日。ハナは1人で例の探偵事務所に来た。不安だから加奈子と一緒に行こうと連絡したが、用事があると断られた。
チラシと履歴書が入った封筒片手にドアをノックした。
「すいません、この間面接希望と連絡した佐倉です」
すると建物内から入って、と男性の声が聞こえた。
「失礼します」
ガラス製のテーブルと革張りの椅子がいくつかある。長椅子にはYシャツにサスペンダーをつけているガタイのいい男性の姿が。
入ったはいいがどの椅子に座ればいいか分からず、キョロキョロしてしまった。視線に気づいて慌てて姿勢を正した。
「君、名前は」
男性の透き通ったバリトンボイスがハナの耳をくすぐる。
「は、はい。佐倉ハナです」
「佐倉ハナ、か。いい名前だな。そこに座りなさい」
「あ、ありがとうございます。失礼します」
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