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名前を褒められたのは初めてで余計緊張して、手と足が一緒になりかけた。男性の向かいの長椅子に座った。
「こちらが履歴書です」
封筒から履歴書を出す。男性はまじまじと見る。
「桔梗大学の法学部に在学中か。てことはもうすぐ卒業だな」
「はい。次のテストが合格すれば卒業です」
成る程、と彼は顎に手をかける。
「じゃあ法律にはある程度詳しいんだな」
弱々しく返事をする。法学部在籍というが、実を言うとあまり詳しくないからだ。つまり勉強不足。
だが自信喪失のハナと対照的に、男性はニコニコしている。
「今ここで結果言ってもいいか?」
「へ?あぁ、はい……」
すると彼は急に立ち上がるなりハナのそばまで来ると、
「合格だ!今日から君は私の助手だ。よかったな」
突然の合格発表に呆然とした。
「なんで喜ばないんだ?在学中だからか?確かに次のテスト次第で卒業できるか分からないって言ってたからな。趣味・特技・自己PRの座右の銘も悪くないぞ。もっと自信を持て」
彼はハナの肩を優しく叩く。だがハナの緊張は解れない。何故ならこれまでの経験で、合格と告げられても結局落とされたことがあったからだ。
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