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口の中に広がる辛味は、激しい痛みと熱をもって口腔内の粘膜を焼いた。
とっさにジュースを口に含み、彼女は激しくむせた。
飲み込んでしまった分が、食道を焼く。
目から涙を、鼻から鼻水を、口からよだれを流しながら、彼女はむせ続けた。
その様子を冷静に見つめながら、彼は平然とケーキを食べ、ジュースを飲んだ。
「最高だよねえ、タバスコって。アメリカで作られたんだけど、僕は留学している間にこれに夢中になってしまってね。」
ただ辛いだけではない深みのある味と、ケチャップとはまた異なる瑞々しいオレンジ色に、知幸はすっかり魅了されてしまった。
外出先にも必ず持参し、食事のたびに大量に振りかけた。
日本に戻った今も、毎月箱買いしている。
そして、知幸のタバスコへの愛情は、食だけにとどまらなかった。
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