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1組の一番下に、東芹の名前がある
はずだったのだが。
「きりはら……く、くさ?」
自分の名前の下にもう一人の名前があり、怪訝な顔をする。
そんな芹に加藤は表情を曇らせた。
「桐原草(きりはらそう)。 お前と違って、単位不認定で留年した奴だよ」
(た、単位不認定?!今時そんな奴いんのか?!)
さすがに、この事実には芹も驚きを隠せないようだ。
ガララッ!
勢いよくドアが開く音。
音の方を二人だけではなく、職員室内の人間が一斉に振り返った。
静まる職員室。集まる視線。
その先に彼はいた。
まず目をひくのは肩までかかる程の長い黒髪。その髪は芹のようにゆるくパーマがかかっている。
ややつり気味の目が威圧感を与えるものの、鼻の線も細く唇も薄い為、顔立ちは薄く見えてどちらかと言うと静かな人間というイメージを思わせる。
しかし、180cmを軽く越える長身を包む制服の着方はだらしなく、ポケットに突っ込まれた右手から覗く親指にはシルバーのリングがはめられており、彼の目同様、威圧感を与えていた。
あたりを見回し、口の端を持ち上げて笑う。そして静かに口を開いた。
「完全にアウェーだな」
これが東芹と桐原草の最初の出会いだった。
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