8月23日

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甲子園の前に一台のバスが止まる。中から出てくる黒の縦縞のユニフォームを着たのは皆、如何にも高校生といった体格をして、顔もどこか素朴だった。 「来ちまったなぁ……」 まるで夢物語を見ているように甲子園の外壁を見上げた相川恭一はエースナンバーを背負うにはあまりに小さな体をしていた。 「そうだなぁ……」 茫然と相槌を打つのは相川の恋女房の長谷川だった。ぽってりとした体格で、見るからにキャッチャーしか出来ないような印象を見ているものに与えている。 「まぁ、ここまでくりゃあ勝ちてぇだな。もう帰ったってろくに夏休み、残ってねぇしな」 キャプテンでサードコーチャーを勤める沢口翔はポツリと呟いて、バスの荷物を分担させて、メンバーの列を整えて先頭に立って歩き出した。 ―――――――――――――― そのバスから少し遅れて、もう一台バスが止まる。青色の専用バスから降りてくる選手は皆筋骨隆々で、はちきれんばかりの肉体は威圧感たっぷりだった。
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