第一章 恋のはじまり

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「…劉華?」 「あっ、ゴメンね、涼哉にぃ」 考えごとしてたから、涼哉にぃが話かけてくれてること、気がつかなかった…。 「劉華、入学式始まるから、一緒に行こうか」 にっこり。と柔らかい笑みを浮かべる涼哉にぃの提案に、頷きそうになってから。はた。と気がつく。 「涼哉にぃ、先生もいっぱいいるから、私、一人で大丈夫だよ? 友達のとこ、いかなくていーの?」 「あぁ…。妹が入学するから付き添うって、事前に言ってあるから、大丈夫だよ。 さ、いこう?」 涼哉にぃは、優しい。 〈お兄ちゃん〉になる前から、いっつも私に優しくしてくれる。とっても嬉しいけど。でも。 「駄目だよ、涼哉にぃ! 私なんかより、自分のお友達と遊んで? 私といたら、きっと退屈しちゃう」 言っておかなくちゃ、きっと涼哉にぃは、私に構って、自分がしたいこと、我慢する。 そんなの、嫌だもん。 「…劉華は優しいね。 じゃあ、終わったら迎えに行くから。 …一緒に帰るよね?」 「うん。 お母さんにも、涼哉にぃと帰って来いって言われてるもんね」 お母さんもお父さんも、仕事が忙しいから、入学式には来ない。 二人とも心配性だから、行き帰りは涼哉にぃと一緒にしなさいって言うんだ。 涼哉にぃと一緒に居るのは、楽しいから、好きなんだけど、 涼哉にぃに迷惑かけたくないから、慣れたら友達と帰るつもり。 「涼哉にぃ、またね!」 「うん。また後でね」
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