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変化
メールサーバーがダウンした時、電話回線がパンクし、人々は手紙に手を出したがデジタル化された社会で手紙を扱える者は少なく、それを知っている者はごくわずかであった。
特に若者には全くといっていいほど知られておらず、手紙ブームで知った者も少なくない。。
そして会社内外での取引は、ほぼ全てがメールでのやりとりとなった今、社内でも陰の薄い窓際族と呼ばれる次期リストラ候補の人間に目が向けられた。
彼らは手紙を知っていた。
―某会社―
「大至急山田さんを呼んで。第2会議室に来るよう伝えなさい」
ハイヒールを翻し、女が部下に命じる。
「女史がお怒りみたいだな」「こないだのサイバーテロでメールが全部やられて頭にきてんだろ」「何も山田さんに当たらなくてもな」「もうすぐいなくなるからいんじゃねぇの」口々に囁かれる言葉達。
「山田さぁん、女史が第2会議室来いって」
投げかけた視線の先にはなんとも冴えない中年男が、少し離れた場所に座っている。返事はない。
「山田さん!女史が呼んでる!」
チラリと若者達を見て面倒くさそうに立ち上がる。
「返事くらいすれよな」
若い者になじられながら男は出ていく。
山田と呼ばれた男はいわゆる窓際族だ。
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