流れるだけの日常から脱出

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闇夜に星のように輝く外灯に挟まれ、大矢の運転する車は高速道路を快走。 すぐ後ろに小谷がぴったりとくっついて来ている。 夜中だけあって走っているのは長距離トラックやタクシー。後は女川達と一緒の目的を持った旅行者だろう。 上機嫌の音楽。女川と大矢は共に歌いながら、これからの楽しい時間を思い浮かべて目的地へ進んでいく。 観光、買い物、夜の街。 道の先に待っている最高の2泊3日は目前だ。 女川は最初に行く予定であるホテルを携帯電話で検索し、着時間を調べた。 「ちょっと早く着きそうやね。どっかで暇潰ししようよ」 大矢は視線を前に向けたまま答える。 「そっすねぇ、漫喫でも行きます?カラオケでもいいっすよ」 「そうやなぁ、じゃあ小谷さんに電話するわ。井ノ下は漫喫かカラオケどっちがいい?」 井ノ下からの返事はない。爆音に近いボリュームで聴いていた、お気に入りのミュージシャンの声で寝息に気付かなかった。
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