流れるだけの日常から脱出

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女川は後部座席の井ノ下に振り返り、見たままを口にした。 「あー、井ノ下寝てるわ。どこでも寝れるなぁ」 井ノ下は後部座席で横になり、クッションを枕にして気持ち良さそうにいびきをかいている。 「大矢は大丈夫?運転しっぱなしやろ?俺は高速乗るの車校以来やでやばいけど代わろうか?」 大矢は目を細めて女川を見つめ、数秒だけ間を置いてから言う。 「まだ死にたくないんで大丈夫っす」 「超賛成。俺もお前らと心中は嫌」 井ノ下が運転席と助手席の間から頭を出して、眠たそうな顔で割り込んだ。 「おー、起きた」 女川は大して驚いてはいないが、驚いた風を装って言った。 「大矢君、何なら運転代わるよ。居眠り運転するかもやけど」 井ノ下は眠気もあって、無表情でまるで冗談には聞こえないことを平気で言ってのける。 「いやいや、危険度上がってますけど?!」 本気で死にたくない大矢は突っ込まざるえ得ないが、井ノ下は続けた。 「大丈夫。何回か居眠りしたことある けど、俺運良く一回も事故ないから」 それが何の保証になるんだか。 とにもかくにも大矢が運転席を譲る気がなくなったのは云うまでもない。
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