流れるだけの日常から脱出

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夜というものは足を止めるものではないが、1日の終了であるには間違いない。 だが、その夜を乗り越えた先に自由が待っているならば、それは経過に過ぎず、時には始まりとなる。 大矢は結局のところ誰にも運転を代わらずにいたが、休憩のためにPAに寄っていた。 不思議と疲れはない。大矢はこのメンバーの中ではよく外の世界へ旅立つ方だが、何時でも麻薬のような高揚感が疲労感を凌駕してしまう。 今は温かい缶コーヒーを片手に煙草から溢れる紫煙を吐いている。 現在は9月だが、真夜中は肌寒い。季節的に日中は暑く、夜は寒く、衣服に悩む時期だ。 何を隠そう彼は半袖のTシャツ一枚にジーンズという格好だが、心の中では失敗したと心底反省している。 そんなことを思っている内に、共同便所から女川が出てきて、軽やかな足取りで寄ってきた。
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