流れるだけの日常から脱出

6/15
前へ
/35ページ
次へ
『ジリリリリン!』 携帯電話からのアラームがいつも朝と時間を正確に告げる。 毎日の始まりの合図だ。 大矢はすぐにアラームを止め、上体を起こし、あくびをして眠気眼を擦った。 適度に整頓された部屋。大矢はベッドから降りると、その足で洗面台へ行き、顔を洗って全ての眠気を落とした。 朝には強い方で、ものの数分で準備を終え、コーヒーとトーストに舌鼓する。 朝は何かと忙しいものだが、彼は数少ない例外だった。 大矢はゆっくりと朝食を済ませると時間を見て、玄関へ向かった。 父も母もまだ夢の中だ。 起こさないように物音に気を付けながら玄関のドアを開け、いつものように仕事場へ向かう。 それでも毎回思う。変わらない日常だと。 たが、今日は少しだけ違うのだ。 現在、6時02分。 12時間後くらいには旅の道を走っていることだろう。 そう思えるだけで足は自然と軽やかになっていた。
/35ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加