ten.

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「ちょっと、待てよ」 後ろから工藤君が追いかけてくる。 なんでこんなことをしてしまったのか、わからないから困ってしまう。 でも、工藤君が飲んでいたジュースを他の女の子が飲むなんて、どうしてもイヤだった。 「待てって」 自転車置き場のところで、工藤君に掴まってしまった。 そして、そのままギュッと抱きしめられて…… 工藤君と私の鼓動が重なる。 走ったから、すっごく速い鼓動。 息も整っていないのに、工藤君は大きな声で言った。 「泉さんっ。俺、すっげー嬉しい!!」 工藤君はそう言って、もっと強く、強く抱きしめた。 私は、それが心地よくて、工藤君の胸の中で頷いていた。 私…… 工藤君のことが、好き? なんだよね? 爽ちゃんのことを想うとキュンっと胸の奥が痛くなるように、工藤君のことを想うと胸の奥がキュンと音を立てる。 この痛みが、新しい恋の始まりなのか、今はまだハッキリとしていないけれど、この心地よさは初めての感覚で、離れたくないって思った。         ……  完  ……
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