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次の日、仕事から戻ると美優が居なかった。
そして、それから美優は戻ってこなかった。
書置きも何もない、寂しい別れだ。
(こんな、女の子を悲しませるようなやつが、ホストなんてできんのかよ…)
美優の件は俺の心に少なからずショックを与えたが、今更引き返すわけにはいかなかった。
「常務、俺、歌舞伎町に行こうと思います」
常務は、学生時代に俺の生まれた赤羽の学校に寮生として通っていて、
俺を良く可愛がってくれていた。
この人もヤンチャな人だったので、
俺としては話しやすく、兄ちゃんのような存在だった。
一通り事情を話すと、常務は少し寂しそうに言った。
「そうか。お前が決めたんならそれでいいが、何ならうちで働いてもいいんだぞ?」
常務は、倒産した会社とは別に土地関係の会社も持っていた。
「…有難うございます。でも、俺、決めたんで」
常務の好意は嬉しかったが、俺はいつまでも甘える訳にはいかなかった。
甘えてしまったら、俺はこれ以上大きくなれないような気がしていた。
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