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「おはようございます。これから今日の審査の説明するからよく聞いておけ。十分に安全に配慮はしているが、実際に戦闘を行う可能性がある以上は危険が伴っているからな」
凄みのある声で念を押されて、先程まで賑やかだった空気が張り詰めたのがわかった。軍人の二人の紹介を軽く済ませて、全員に念話魔法陣が書かれた紙が配られる。
「これを使えば俺たち三人の誰かが対応する。もし身の危険を感じたら迷わずに使ってくれ。今回の審査はあくまで今の実力を把握するためで成績には関わらない。助けを求めてもなにかが不利になるということは無いし、むしろ正しい状況判断ができるのは強みだと考えろ」
この森にそこまでの危険があるとは思えないが、先生という立場として生徒の命を預かっている責任があるのだろう。念には念を、というやつか。
「この森の様々な場所に魔法陣が書かれた紙を設置している。それを探し出して起動、紙を持ち帰って来るまでが審査の内容だ。魔法陣にはそれぞれ罠がしかけられているから起動する時には十分注意するように。質問がある奴はいるか?」
内容は至極単純なもので、特に手は上がらない。全員が理解したことを確認して、イルガがそれじゃあ、と手を叩く。
「はじめ!」
キリト含め気合いの入っている者たちが一斉に森の中へ駆け出して行って、イルガがあまり騒ぐなよと注意する。森の中で大きな音を立てるのはご法度に近く、それは全員がわかっているはずなのだが。
「がんばろ!」
私も! と意気込んだアズサが走り去りながら声をかけてくれ、うなずいた。
「また後で」
同じようにうん、と応えるユリの声が少し震えていて、思わず微笑む。
「ユリ、無理するなよ」
「……大丈夫、ちょっと緊張しちゃった。がんばろうね」
まあ、彼女なら気が弱くとも実力は申し分ないはずだから大丈夫だろう。アクトからもがんばろうと声をかけて、森を入ってすぐに別れた。
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