逃げた先

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 弱かった。とても弱くて、なにもできない存在。  強くなろうと思った。がむしゃらに努力して、どうにか変わろうとした。  努力したところでなにも解決しないと知ったのは、もう取り返しのつかない状況になってから。 「生まれなければよかった」  全てを拒絶する言葉は、すぐに傍らの人物によって否定される。いつもそう。きっと、自分は彼に否定されることを願ってこの言葉を発するのだ。それが罪に対する逃げだとわかっていても。 「逃げてしまえばいい」 「……逃げたところで、なにも変わらない」  駄々をこねる子供のようだ。 「少し考える時間だって必要だろう? 今の環境にいたままでは、その権利すら与えられない」  じゃあどこへ、と少し投げやりに問うと、彼は予想もしていなかった答えを提示した。 ―――― 「学校!?」  久しぶりに会話した父、ラルクは予想していた通りの反応を示して、アクトは目をそらす。 「そんなところ、お前は通う必要ないだろう……」 「……ここにいたくない」 「だったらどこか宿をとるだけでもいいだろうが」  アクトが学生として行動範囲が狭まってしまうことを危惧しているのだろう。反対されることは想定内だった。 「アクトにも、年齢相応に楽しむ権利はあるはずだ」 「セト、いたのか……」  アクトの隣に姿を現したセトに、ラルクは苦い表情を浮かべる。 「入学するにしてもあと二ヶ月後だろう……そんな今から」 「入学試験の申込用紙、もう提出した」  反対されたとしても、学校へ行くという選択肢を辞めるつもりはなかった。ラルクには決定事項として伝えただけ。 「はぁ!? お前、いつのまに……」 「……時間がほしい」  頑なに意志を曲げるつもりはないことがわかったのか、深いため息をつく。 「勝手にしろ」
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