逃げた先

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 魔力はそれぞれの属性を帯びるとそれを象徴する色を概念としてまとう。人によって細かな色彩の差異はあるが、火は赤、水は青、風は緑、雷は黄、地は茶系統。それらの色は往々にして魔力の持ち主の髪や目の色となって現れる。もちろんアクトのように表立ってはわからないことも多いが、見た目は相手の得意属性を知る一つの指標になりやすい。 「二人とも特殊属性持ちってことか」  アズサが少し羨ましそうに呟いて、ユリと目を合わせて苦笑した。 「特殊属性は遺伝の力が大きいんでしょ? 時々後天的に身につくらしいけど」  基本の五属性は得意不得意の差はあれ誰もが使用できるが、光を初めとした特殊属性は魔力の特性によって使えるかどうかが変わってくる。  光属性は比較的使用者が多いが、毒や重力などかなり希少な魔法を使える人もいる。中には血族にしか使用者が確認できていないような"固有属性"と言われるような魔法もあるが、それらを使える者は国家戦力として軍に入隊、そうでなくても王都に居住して王都で最も有力なギルドに所属していることが多い。  特殊属性を得意とする魔法使いは、それだけで魔法を磨く価値があると見なされる。国もそういった魔法使いにはかなりの国費を割いて、貧しくても魔法教育を受けられるようにしているようだ。  そういった背景を抜きにしても、特殊属性を持たないまだ未熟な魔法使いが憧れるのは至極当然のこと。 「下手にたくさんの属性を使うよりは一つの得意属性を伸ばす方が今の時期はいいと思うけどな」 「それはそうだけどさ……」  突然勢いよく教室の扉が開いて、大柄の男子生徒が空席だったユリの隣にどかっと荷物を置く。相当急いできたのか大きな息を吐いて、脱力するように席に座った。
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