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フェンスをゆっくりと乗り越えた。ここから落ちたら、何か変わるかもしれない。つらかった日々もこれでようやく終止符が打てる。この先には何が待っているのかな?楽しいことが待っているといいな。私は上を向いた。太陽がきらきらと輝いている。
「グス...」自然と涙がこぼれる。放課後のせいか部活をしている生徒の声がする。楽しそうに笑う声がする。私には送れなかった人生。輝く青春の時代なんてなかった。きっと、この先にはいいことがあると。
「そんなところにいたら危ないですよ」と1人の男の子は私にそっと声を掛けてきた。私は前を向いたまま笑った。
「分かってる。邪魔しないでくれない?」男の子はため息をついた。
「分かりました。なら、僕のわがままを聞いてもらえませんか?」
「なに?」
男の子もフェンスから身を乗り出した。驚いた顔で私は男の子を見る。男の子は軽くほほえんだ。
「少しだけ僕とお話しをしてくれませんか?ちょっとだけでいいですから」
「...いいよ」優しそうに言ってくれる男の子に駄目とはいえなかった。
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