私の大切な人(NL)

3/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/32ページ
 桜が咲いていて、いつもより学校内が明るく感じる。私は体育館の入り口の端に立てってそっと中をのぞく。貴方は一生懸命、シュート練習をしていた。何度も何度も打っていた。誰よりもひたすらな様子を見て、胸がどきどきした。私は貴方のそんなところが好き。この気持ちを伝えることができなくてもいい。こうやって姿を見ることができるのなら...。  ものすごい早い勢いで誰かが来るのが分かった。私はそっと物陰に隠れた。どうやら隣のクラスのバスケ部の子みたいだ。貴方に何かを話しかけている。そっと耳を済ませた。 先ほどの男の子はかなり慌てた表情で伝えていた。 「達也、お前レギュラーはずされたって本当か?」貴方の名前は達也君?初めて名前を知って、少しうれしかった。達也君はまたシュート練習を再開しながら答えた。 「ああ、本当だ。先生に言われた」真顔でそう答える達也君。男の子はかなり悲しそうな顔をした。 「こんなに練習しているのに...」達也君はその男の子に笑った。 「仕方ないって。才能の違いとかもあるんだし」男の子はつらそうな顔をしながら体育館を出て行った。  男の子が出て行った後、貴方は泣き始めた。無理をしていたんだと気づいた。一人で泣きながらシュートを打つ貴方を見ていると胸が苦しくなった。私に何かできることはないのかな?私はそう思い始めて、前に出た。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!