私の大切な人(NL)

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 気がつくと、私は自分のハンカチを取り出して達也君に渡していた。心臓の音が聞こえるんじゃないかってどきどきしていた。泣いていた達也君は驚いた表情でじっとこちらを見つめた。鳥のさえずりがどこか遠くで聞こえる。 「あの、これ...使ってください」勇気を出して出した声はとても小さかった。 「私、貴方のことをずっと応援していますから。あきらめないでください」私はハンカチを手渡してすぐに体育館を出た。  教室に戻り、いつもの窓際に座った。自分の行動に信じられなかった。どきどきしながらも若干うれしかった。初めて声をかけることができた。ずっと憧れの存在だった。ただ、会えただけでうれしかった。だから、それ以上のことなんか望んでいなかった。  次の日、教室に行きまたいつもの窓際の席に座って本を読む。いつもと変わらない朝。とても気持ちの良い一日。もうすぐ達也君が来るなぁ。私はそう思って廊下側をちらりと見た。そこには昨日とは違って元気に登校している達也君がいた。いつもよりかっこよく見えて、どきっとする。隣の教室に行ったのかな?私は本を閉じ、教室を出ようとした。
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