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大学2回の夏。
地元京都から大阪の田舎にある大学の近くに移り住んだ私は、一人暮らしを謳歌していた。
新しい土地、新しい友人、知らない世界が私の前に広がり夢中になってはしゃいで遊んで行く。
そんな夏のある日の夕暮れ。
中古の車を走らせ一人暮らしの家に向かっていた。やがて太陽は沈んで空が碧さを増して行く。
後で思えばそれが"逢魔が時"という物だったのだろう。
慣れたはずの道、民家が立ち並ぶ狭い道のカーブでそれは起きた。
対向車線から来た車との距離感と間違い民家の壁に激突。
瞬間、意識が飛んだ。
激しい衝撃を全身で受け、鈍い頭を何とか働かせ周りを見ようとして、動きが止まる。
何が起きたのか分からない前後不覚の状態で真っ先に気付いたのは、バックミラーに映る月。
真ん丸い綺麗な円は、クレーターすら判別出来る程に大きく、赤かった。
体中に悪寒が走る。と同時に脳裏に浮き上がる2年前の映像。
偶然にしては出来すぎのそれの出現に、私は怖くなった。一体アレは何なんだ、叫びたい気持ちを抑えて事故の処理をしようとして気付く。
車のエンジンルームは大きくへしゃげているのにエアバッグは開いていない。
にも関わらず、私の体に異常は一つも見られなかった。
事故は不運、怪我がなかったのは幸運。
残ったのは気持ちの悪い感情だけだった。
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