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二ヶ月後、私は病院にいた。
車の事故のせいではなく、傷口にバイ菌が入り化膿してあまりに痛かった為である。
ラグビー部に所属していた私が練習中にグラウンドで怪我をした時に受けたもの、大した怪我ではないと思っていたが放っておくと周辺が壊死するという。
血液検査で一発注射、化膿した膿を抜くのに太い注射を刺され、その部分を洗うのに切開することになり部分麻酔、その後点滴と抗生物質を注射投与。
厄日だなと、思っていたら医師に言われた。
「思っていたより酷いからちゃんと手術しないと再発するかもしれない。どうしようか?」
そんなことを言われて放置するほど馬鹿ではない。
結局、3日入院することになって当時付き合っていた彼女が見舞いに来てくれた。
「ねぇ、大丈夫なん?」
「うん、手術したら完治するって言うてたし、心配せんでも大丈夫やって」
「せやったらいいんやけど……」
彼女は何か物言いた気で、口を濁している感じがした。
「何か、言いたそうやけど?」
「うん……あんなぁ、昨日の晩見てん」
「見てんって、何を?」
「月、真っ赤でめっちゃ大っきい月。前に言うてたやん、赤い月が出たら気を付けなあかんって」
「……」
言葉が咄嗟に出なかった。
けれどどこか納得した。
やはり何かある時、空には赤い月が昇るんだと。
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