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明治時代から続く、風格のある老舗温泉旅館。そこで若い女が新たに雇われる事になった。
女の名は智子。愛敬のある見た目と違わない明るい性格から、すぐに職場に溶け込んでいった。
また、好奇心旺盛な性格も相まって、積極的に仕事も覚えていく。数ヶ月経つ頃には一人前扱い、最近の若い娘さんにしてはよく働くと、年配の同僚にも気に入られていった。
そうしてすっかり馴染んでいった頃、智子はある事実に気がつく。
客間のある廊下の一番奥、突き当たりにある椿の間。そこは智子が働き出してから半年近く、一度も客室として使われていないのだ。
気がついたのは椿の間の手前の部屋を掃除していた時、客の退いた少し肌寒い昼前の事だった。
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