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開かずの間。そんな言葉が智子の頭に浮かぶ。
もともと古びた温泉旅館。歩く度に軋む廊下の音も手伝い、ひとりでいると明るいうちでも気味が悪いと以前から智子は思っていた。
だがそこは好奇心旺盛な智子。心の中でゆらゆらと揺れた天秤は、恐怖心をはね除けて好奇心の方が勝った。
意を決して部屋を出た智子は椿の間と向かい合う。外から日が指すとはいえ、電灯の付いていない廊下は薄暗い。他の中居たちは掃除を終えたのか、しんと静まりかえって人の気配もしない。
まるで来る者を拒むかのように、智子は手をかけた襖を重たく感じる。鼓動は速く脈打ち、襖の金具に触れた指先が震える程だ。
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