開かずの間

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 「失礼します!」  中に人がいるかも知れない。人ではない者がいるのかも知れない。様々な推察が交錯し、必要以上に大きな声と、必要以上に強い力で襖を開けてしまう。  バンッ  勢い余ってぶつかった襖の大きな音と共に飛び込んで来たのは、ある意味期待はずれ、しかし期待が外れてよかったとも思える光景だった。  他の部屋となんら変わらない、12畳程の和室。幽霊もいなければ怪しいシミもない。ただひとつだけ、他の部屋と違うものがあった。  ちゃぶ台の上にぽつんと、赤い小さな木皿におかれたおまんじゅう。名産品の温泉まんじゅうだ。
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