開かずの間

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 女将さんか誰かが休憩室に使っているんだろう。智子はそう結論付け、部屋の中を一通り見渡す。  ピシッ  ビクッと肩をすぼめる智子。突然の物音に緊張が走る。  「最近寒くなってきたから……よね?」  気温の変化による柱の軋む音だと思い込もうとする。しかし頭の中では恐ろしい妄想が浮かんでいく。  「仕事に戻らなくちゃ」  気を紛らすように呟き、智子はそそくさと部屋を後にしようとする。先程の事を思い出して照れくさそうに舌を出すと、今度は大きな音を立てないようにと静かに襖を閉めた。  この時智子は気付いていなかった。後で食べるというのにラップもせず、裸のまままんじゅうを置いておくだろうか?
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