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その男の人の言葉が私の心を震わす。
無理矢理閉じこめていた感情が、フタをした箱から少しずつもれ始めた。
言っていいの?
目指していいの?
夢をもう一回、持って良いの?
「俺は、君の笑顔を多くの人に届けたい」
その言葉を、信じて良いの?
「聞かせてくれ、君の言葉で。理屈じゃない、しまっている本当の思いを」
男の人の言葉は、私のかたくなな思いを打ち壊していく。
-もう、嘘をつく必要はなかった。
「わ、わたし、」
ちょっと声がつまる。小学生以来、喋ってない言葉だから、うまく声にできない。
「あ…あの…」
彼は優しく、見守るように私の言葉を待つ。
待っている人がいるのだ、私の言葉を。
「アイドルに…なりたいです」
一回目は本当に小声で、ぼそぼそとして。
「アイドルに、なりたい、です」
二回目は何とか言葉になって。
「私、アイドルになりたいですっ」
三回目に、やっとうまく言えた気がする。
だって、それは小さい頃、無邪気に言っていた言葉だったから。
こんなに、いろんな思いを込めて言ったことなんてなかったから。
だから
「うん、なろう。俺が君をトップアイドルにプロデュースしてみせる」
この言葉を聞いて、安心とか、いろんな感情がまざって、涙が出てしまったのだ。
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