始まりの始まり

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―コンコン。  すると、私を引き戻すようにノックの音が鳴った。 「…お母さん?」 「いや、父さんだ」  ノックの主はお父さんだった。普段部屋まで来ないから、突然の来訪に少し驚いた。 「…珍しいね。どうしたの?」  さっきの今だから、なぜ来たかは明白なのだけど。 「ご飯はどうする?」  …予想外だった。  てっきり、さっきのことでお叱りをいただくと思っていた。  確かにいつもなら夕飯の時間だけど、頭も疲れているし、なによりケーキを食べてきてお腹が少し満たされている。 「んー。わかんない。食べられたら食べるよ」  まぁ、無難な返事。 「わかった」  そしてお父さんも無難な返し。親子だね。 「あー…一つ、言い忘れていた」 「何?」 「…私と母さんは、お前を応援するぞ」  …急に驚くようなことをいう。  まったく、親子だ。 「ありがと」  感謝の言葉はすんなりでた。 「…頑張れ」  ぶっきらぼうな、暖かい言葉。私は階段の降りる音を聞きながら、満たされた気持ちで眠りについたのだった。
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