終わりの始まり

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 いきなりのことで思考が止まった私を見て、その男の人は 「立ち話もなんだから」 と近くの喫茶店を指さした。  どうすればいいのだろうか?  じっくりと男の人を見てみる。  顔は…まぁまぁだろうか。いわゆるイケメンではないが、清潔感があると思う。  あとは…どうだろうか?際だっていいところも悪いところもない気がする。  この時点では怪しい人には見えないが、見た目で判断できない。  そんな私の心を読んだのか、男の人は 「いや、怪しいものじゃないからっ。ちょっとだけ、話をしたいんだ」  と、あわてふためいた。  その表情にちょっとかわいいなと思い、すこし和んだ。  ふと、ちょっとしたいたずら心で「おごってくれます?」と言ってみたら 「も、もちろんだよ」 とうわずった声。  必死な男の人の頼りない言葉がちょっとだけおもしろく、口元がゆるむのを感じた。  ―大丈夫だ、この人は悪い人じゃない。 「それなら、いいですよ」  おごらせる気はないけれど。ちゃんと自分の分は払うつもりだ。そのくらいのお金はある。  …多分。  男の人は喫茶店の扉を開け、入るように促す。  私は彼の誘導に従い、女の子達の間で「美味しいけど高くてなかなか行けない」ことで評判の喫茶店に入ったのだった。
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