始まる日

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 ケーキは聞いていた以上に美味しく、ほっぺたが落ちそうだった。思わず笑みがこぼれる。  男の人は、想像以上の値段に驚いたのか、冷や汗を垂らしていた。思わずなのか「高い…」と愚痴がこぼれている。 「あはは…」  私は苦笑しかできない。  まぁ、ショートケーキ1つに1200円もすると誰が考えるだろうか。  流石に食べられないのは可哀相なので 「これ、食べます?」 と一口差し出したら、 「いや、甘い物苦手だから」 と全力で断られ、この店で一番安いアイスコーヒー(350円)をすすっていた。  …よく考えたら、さっきの行動はいわゆる「あーん」の体勢ではないか。 「す、すみません…」  誰にもやったことがないだけに、ちょっと恥ずかしくなった。  若干の気恥ずかしさからケーキに意識を移し、甘さを堪能し尽くした。  私が食べ終わると、男の人は名刺を机の上においた。 「俺はここでアイドルのプロデュースをしているプロデューサーだ。よろしく」  自己紹介に加えて、まだ小さい会社だからアイドルも少ないけど、と苦笑する。  名刺をみると、会社名は「490プロダクション」と書いていた。  プロダクションといえば、765プロが最も勢いがある。  私の憧れでもある天海春香さんや歌姫の如月千早さんの他、所属アイドルが全員売れっ子というとんでもないところだ。  他にテレビで聞いたことがあるのは876プロぐらい。  もう少し前には961プロという名前も聞いていたけど、最近はほとんど聞かない。  この490プロというのは今まで聞いたことがない。もしかしたら、ネットで検索すれば会社のHPくらいでるかもしれない。  とりあえず会社の真偽は後回しにして、 「一つ、いいですか?」 「うん?」 私は一番気になっていることを直球で聞いてみた。 「あの、どうして私なんですか?」
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