2人が本棚に入れています
本棚に追加
私は自分でも特徴がない人だと思っている。
特技はないし、趣味も友達との長電話。
勉強は学年の平均より少し上、スポーツは少し下。
得意なのは現代文と古典、苦手なのは数学と英語。
料理はレシピを見ればなんとか作れる。
お菓子作りの方が得意かもしれない。
掃除とかは…好きだけど、得意ではない。
スタイルは…どうだろうか?クラスの子たちと比べると、若干かすむ気がする。
…おしりは大きいのに。(私にとってコンプレックスでしかないが)
と、このように改めて振り返っても、他の子と比べて胸を張れるところがない。
そんな私が、アイドルになる?
ドッキリとしか思えない。
「私、オーディションに出たこともないんですよ?」
アイドルは、小さい頃の夢だった。
テレビの中で、笑顔で、きれいな歌を歌う姿に私はあこがれていた。
小学生くらいまで、本気だったと思う。
だけど、中学生になって、私よりきれいな人やかわいい人、歌がうまい人はごまんといることがわかった時、その夢はただの夢となった。
その後は特筆することもない、普通の学校生活を送り、高校生へ。
アイドルになろうなんて考えもしなかった。
そりゃ、若干あきらめきれなくてくすぶっている気持ちはあった。
だけど自分に花はない。
特技もない。
…特徴すらない。
それを私はわかっている。
身の程を知っている。
だから、何で彼が私に声を掛けたのか、どうしても気になったのだ。
「お願いします。教えてください」
私は顔を下に向け、じっと彼の言葉を待つ。
最初のコメントを投稿しよう!