始まる日

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 私は自分でも特徴がない人だと思っている。  特技はないし、趣味も友達との長電話。  勉強は学年の平均より少し上、スポーツは少し下。  得意なのは現代文と古典、苦手なのは数学と英語。  料理はレシピを見ればなんとか作れる。  お菓子作りの方が得意かもしれない。  掃除とかは…好きだけど、得意ではない。  スタイルは…どうだろうか?クラスの子たちと比べると、若干かすむ気がする。  …おしりは大きいのに。(私にとってコンプレックスでしかないが)  と、このように改めて振り返っても、他の子と比べて胸を張れるところがない。  そんな私が、アイドルになる?  ドッキリとしか思えない。 「私、オーディションに出たこともないんですよ?」  アイドルは、小さい頃の夢だった。  テレビの中で、笑顔で、きれいな歌を歌う姿に私はあこがれていた。  小学生くらいまで、本気だったと思う。  だけど、中学生になって、私よりきれいな人やかわいい人、歌がうまい人はごまんといることがわかった時、その夢はただの夢となった。  その後は特筆することもない、普通の学校生活を送り、高校生へ。  アイドルになろうなんて考えもしなかった。  そりゃ、若干あきらめきれなくてくすぶっている気持ちはあった。  だけど自分に花はない。  特技もない。  …特徴すらない。  それを私はわかっている。  身の程を知っている。  だから、何で彼が私に声を掛けたのか、どうしても気になったのだ。 「お願いします。教えてください」  私は顔を下に向け、じっと彼の言葉を待つ。
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