文章基礎講座ー視点編ー

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 で、一人称視点っていうのは。  主人公が見聞きしている『モノ』を描くわけですよね。例えば、人だったり、家だったり、花だったり、空だったり。  単に人とは言っても、ラブラブカップルかもしれないし、喧嘩中のチンピラかもしれない。花とは言っても、一輪花かもしれないし、花畑かもしれない。  そういった細かい差異がある目の前の『状況』に対して、何か感じた、あるいは何も感じなかった主人公の心理。これも描く対象ですよね。  例えば、快か不快か。あってるか間違ってるか。当たり前か変か。主人公の性格や考え方から生まれる『人格』というフィルターを通すことで、より彩り鮮やかにモノを見せられる。  つまり、どういうことかというと。  一人称の小説で描けるものというのは、主人公が五感で感じた『モノ』全てと、それらによって動いた感情やそれらに対する意見的な思考判断をする『人格』である、てわけです。  と、一人称視点で描くものがシンプルに2つに分けられたところで、それぞれについて補足を少し。  モノーーここからは美術用語でモチーフ(描く対象物的なもの。人物の場合はモデルと呼ぶ)と呼びましょうか。モチーフに関して言えば、描写は可能な限り綿密な方がいいと思います。  重要なモチーフ、あるいはモデルについて描写するのは当たり前ですが、前章で言った通り日本人は空間というものに敏感です。軽くでも描写することで、より主人公のいる場が鮮明になることを頭に入れておきましょう。  次に人格についてですが、注意事項として“主人公以外の他者の心情を書かない”、という絶対の掟があります。  理由としては単純に、他者は一人称ではないから。目の前の人間がいきなり『私』になることはありえないでしょう? 二人称である『あなた』にはなり得ても、その心情を主人公が読めるはずがありません。  一人称=主人公視点となんとなく分かっていても、この辺があやふやだと話にならないので気をつけましょう。私は特にかもしれませんが、一人称小説で他者心情がいきなりあったりすると非常に違和感を覚えます。
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