文章基礎講座ー視点編ー

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 もう少し掘り下げてみましょうか。  主人公の人格というフィルターを通してモチーフを描く、とはつまりどういうことか。  それは、作品の中で最も魅力的に見えるものは主人公ではなくモチーフの側である、ということです。  ヒロインやわき役をより引き立たせる効果がある、とでも言えば分かりやすいでしょうか。  前述した通り、一人称小説で描写されるのは主人公の目に写るもの、耳に聞こえるもの、鼻に匂うもの、口で味わうもの、肌に触れるもの、という五感で感じるものです。  つまり、決して主人公を描くわけではない、ということです。一人称では主人公を描くのは『ストーリー』です。これについては後々語るので今は詳しく言いませんが。  例えば、ヒロインの頬が赤く染まった、という事象をただ書くのではなく。それを主人公が可愛いと思ったことで、普段と違って見えるヒロインとして描いてあげる。こうすると、ただ単純に描写をするよりもより魅力的に、美しく見えるはずですよね。  要は、目の前のモチーフをそのままに描くだけでなく、主人公なりの『解釈』をくわえることができる、というわけです。  これこそが一人称で最も強力な武器であり、魅力であると私は思います。  逆に言ってしまえば、これを上手く扱えない、あるいは作品の印象的に適切ではない場合、三人称や複数のキャラの視点を転々とさせる1.5人称(一人称の亜種。本来の名前を知らないので私は勝手にこう呼んでる。以後半人称)の方が良い可能性があります。  しかし、三人称は極端に難易度が高く、半人称は便利さに高を括(くく)ると話がごちゃごちゃになる危険があるので注意が必要ですが。
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