百年戦争

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 広大な草原。葉を茂らせる木立。足取り軽く流れた風は、丘の頂上にある岩に腰を下ろして休む青年の髪を弄んでは去っていく。  まだ陽の高い昼下がり。光を受ける青年の肌は青白く、線の細い銀の髪がいっそう白さを強める。  ただ、開かれた眼は服を濡らす血と同じ赤。  片膝を抱えて鬱々と眼下を眺める青年の頬を、涙の代わりに一筋の血が伝う。  そろそろ終宴を知らせる鐘が鳴る頃。  フッ……っと顔を上げ、耳を澄ます。  けれども鐘の澄んだ音は鳴らず、鈍く、耳障りな鎧の不協音が丘を駆け上がってきた。  丘の下では大勢の人が武器を持ち、互いに斬り合っている。  轟音は空気を切り裂いて現れる魔法エネルギー。  青年は今、戦争の最中にいたのだ。  鎧の主は戦線離脱か、それとも青年を追ってきたのかわからない。  青年は手元に置いた武器を取る。  黒く、光り輝く様は美しく、慈悲に無慈悲に命を喰らう死神の鎌≪デスサイズ≫。  それを構えもせず、相手の首へと滑らせる。  躊躇いのない動き。重さのない動き。  デスサイズを振るった結果に迷いはなかった。
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