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「まず、こう言った誕生の者は、英雄視されたり神様より授かった赤子、神の子だと表現されることが多いだろ?あ、先に言っておくが、格闘家でそう名乗っている人とは別だからな」 「ぷっ…わかってるよ。もう、真面目に聞いてるんだから」 円は苦笑し、飲みかけのペットボトルの紅茶を一口飲んだ。 「で、思ったんだ。それじゃあそれらの赤子は一体何なのか?って。目的は?」 彰は自分を落ち着かせるように深く息を吸い、長い息を吐くと、手もとのペットボトルを取りゴキュゴキュと勢いよく水を飲んだ。 「高校からの付き合いの俺達しかいない…たった二人だけだが、我が『世界の摩訶不思議同好会』ボスの俺としては“宇宙よりの訪問者”説をここに掲げる」 ドンッと置かれたペットボトルから、残り少ない中身の跳ねる音がした。 「“宇宙よりの訪問者”ってことは…つまり?」 「宇宙人と呼ばれる方々だ」 彰は仰け反り、古い回転式の事務椅子を軋ませながら天井を見上げた。 「かぐや姫が宇宙人てのは百歩譲ってヨシとしても、他は?だいたい、『御伽草子』だっけ?あれに載ってる話が何故宇宙人なのさ。助走なしで爪楊枝で棒高跳びしてるみたいじゃん」 円はフッと鼻先で笑う。 「俺だってこんなこと、認められないことくらいは百も承 知だ」 彰はノートの次のページを開き、ボールペンを手にクルク ルと回した。 「面白いとは思うけど、そう思った根拠って?」 円は先程までのチャラけた顔を見ることは出来ないほど、 複雑な表情で彰に問う。 「これは俺の仮説で勘なんだが…。まず、自分達の仲間を赤子として地球に送り込むんだ。世界中各地にな。そして中に入る。その先は最初目についた場所だったかもしれない。それが、竹であったり 桃であったり瓜なんだ」 彰はグリグリとノートの隅の空白部分にペンで何重にも意味のない円を書きながら続けた。 「母体となる人間の女性にうまく潜り込めた者もいる。その場合は年齢を無視してな。だから年老いた夫婦にいきなり子どもが授かったりしたんだ。当時は子どもが生まれること以外、母体となる場所は問題視していない んだ」
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