○ 月 ○

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「それで?」 「大きさだって小さいだろ?それは みんなどこへでも入り込みやすいよう、小さいサイズなんだと思うんだ。時として タニシに入り込み、そのまま母となる母体へと移行した強者がタニシ長者だったんじゃないかと」 円は目を見開き、驚いたように彰を見ている。 彰だって自分で無茶な説を考えて、『何を得意気になって』と客観的に見ていると気持ちもある。 「それじゃあ、彰の言う“その当時”以降は?」 「アブダクションを主にしているんではないかと」 「アブダクション?」 円は首をかしげ怪訝な顔で彰を見た。 「誘拐(アブダクション)だ。 UFOの中に誘拐されて、医学的手術を受けることや、小さいト ランスミッション(発信機)を埋め込まれると言うこともあるらしい」 彰は低い声で語っている。 円は声も出さず、黙って聞いていた。 「中には『実験や研究の対象となった』と言う証言や、『性行為の対 象となった』と言う報告もあるらしい。ただ残念なことは宇宙人の存在を裏付ける物的証拠が示されていないらしい」 彰はノートに目を落とし、さらに次のページをめくった。 「宇宙人の目撃ははるか昔からあるようだが、俺は奴等は長い間“観察”を続けていたと思う。トランスミッションの代わりに赤子を使ってな。具体的なデータの回収場面を記しているのが“竹取物語”なんじゃないかと…」 「それじゃあ、月の都の使者って言うのは…」 「ああ、物語では“天人”や“月の都の人”と表現されているが、“月”=宇宙とひとくくりにしていたのではないかと。そして、かぐや姫はUFOに乗せられ回収された」 彰は残りの水を全て飲み干し、下を向いて一息つく。 「その頃の宇宙人はまだほとんど温厚で、世界各地でそんな活動をしていた。そして何年も何年も…繰返しているうちに、宇宙人だって変化しより効率的なデータ回収方法に行き着いた…それが近年のアブダクションだ」
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