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☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
僕は不細工である。
それもかなりのものである。
イメージしやすいように例をあげるなら、落ちた消しゴムを拾って渡そうとすると小さく悲鳴をあげられたりする。
見慣れてるはずの家族からですら、寝起きにお前の顔は心臓に悪いと言われるレベルだ。
入学式、そしてその後のHRや休憩時間、誰一人からも話しかけられなかった。
だが僕は今流行りの草食系男子ではない。
僕から積極的に、複数の人に声をかけたりしてみた。
だがまともに受け答えしてくれる人は一人も居らず、軽く流されたり、一歩引いた態度ですぐ切り上げられた。
そこで諦めればまだ良かった、何を血迷ったのか僕は前の席の女の子に声をかけたのだ。
これが全ての元凶である。
「ねえ、ちょっといいかな?」
前を向いて鞄を整理していた彼女はこちらを振り向いた。
「んん? な~に......ひぃっ!!」
化け物でも見たような怯えた顔で悲鳴を上げる。
「僕、田中っていうんだ。 これから同じ斑だし、よろしくね」
「......よ、よろしく......」
彼女は引きつった顔で小さく返事をした。
ん? 肩に糸くずがついてるじゃないか。
僕は肩に腕を伸ばして、
「あ、肩に糸く」
「きゃ、きゃああああああああ!」
彼女は大きくのけぞり大声で悲鳴を上げた。
そのまま椅子から転げ落ちてヒステリーを起こしたかのように大声を出す。
「さ、触らないで! た、助けて! もうやだあああ!」
ついに泣き出してしまった。
さすがに危機感を感じて誤解を解こうと思ったが、気がつくと周りにはクラスメイト達が集まっていた。
女子達は彼女を僕の視界から隠し、慰め始めた。
男子達は僕に腫れ物を見るかのような視線を送ってきていた。
一躍注目の的である。
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