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「ん?歌声…」
何処からか聞こえて来る歌声に惹かれるように青年は踵を返した。
「アレンッ、待機命令が出てるんだぞ」
「分かってる。ちょっと行って帰ってくるだけだから心配すんな」
仲間の制止を軽く受け流した。
城というのはどういうわけか無駄に広く入り組んでいる。
「権力者はだから嫌いだ。無駄に誇示しやがって」
周りを見ればきらびやかに飾られた装飾品だらけで、正直圧死しそうだと彼は思った。
(あるのは帰るための家と友と不自由なく暮らせるだけの金だけで十分だ…ホントッお貴族様は悪趣味だ)
そんなことを考えながら歩いていたら、歌声の主が確認できる場所へとたどり着いていた。
(あれは…)
噂に聞く【奇跡の歌声】を持つ東の歌姫は小鳥達に囲まれながら優しい歌を口ずさんでいた。
ふと見えた歌姫の顔を見て、アレンは驚きを隠せずにいた。
「フレイ…?いや、違うよな」
だいたい知っている人物は男であって目の前の娘ではない。
だが、よく似ていた。
「アレン、すぐ帰ってくるんじゃなかったのか?」
「ん?あぁ悪い。聴き入ってたようだ。もう戻る」
仲間に肩を叩かれ、思考を戻すと「しっかりしてくれ」という仲間の苦言に苦笑を漏らしつつ踵を返した。
歌姫の自分へと向けた視線に気付くことなく。
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