12人が本棚に入れています
本棚に追加
━━中学三年の秋
『いちについて』
すぅー…
と大きく息を吸い、少し止めてから
ふぅー…
とゆっくり息を吐き体をリラックスさせる。
僕はスタートラインに左足を合わせ、右足を少し引く。
『ようい』
僕は少し前に体重をかけ、スタンディングスタートの姿勢をとり息を止め、音に集中する。
…………。
パン!!
音と同時に足で地面を蹴り、じっと固まっていた体を目覚めさせる。
タタタタ…
視界の端に隣の走者が見える。
大丈夫。僕はスタートが苦手だ。ここからが勝負だ。
ピッチをあげ少しずつ加速していく。
タッタッタッタ…
スピードにのってきたら少しずつストライドを伸ばし最高速へ近づく。
視界の端の走者は消えた。
タッタッタッタ…
スピードを落とさないよう。腕をしっかり振り目はゴールの先を見つめる。
タッタッタッタ…
ゴール!
少し流し、ゆっくりスピードを落とし、顔を上げ空を見上げる。雲は遠く。風が心地いい。
やったぁー!一位だ。
最初のコメントを投稿しよう!